kahonium's diary

色んなことについてそれなりに書き連ねます

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?【考察メイン】

 打ち上げ関連記事2つ目です。1つ目はあらすじから感想まで書き尽くしましたが今回は核心に近い部分での考察を主にしていきたいと思います。これも前回同様ネタバレを多く含んでいます。というかネタバレしかありません。何か思いつくたび更新していきたいと思います。

 

 注)以下の文章には、「1st if」「最初の世界」など、私独自の表現をしている箇所があります。説明は前の記事に書いてあるので、読む上で支障に感じる場合は先にそちらを読むことをお勧めします。

 

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 これは典道の物語でもあり、なずなの物語でもあります。日常モノでもあり、恋愛モノでもあるでしょう。解釈は人それぞれなので、これから述べる私の考察も数多くあるうちの一つの参考として頭の隅にでも置いていただけると幸いです。

 

 なずなは最初夏休みの間に転校する由を教師に伝えておいたため、予めそうなることはわかっていました。いつ町を出て行くかは定かではありませんでしたが、とりあえず祭りの日(8/1)でなかったことは確かでしょう。となると、彼女はその日に限って母親たちから逃げる必要がなかった。祭りのどさくさに紛れて逃避しようという想いが少なからずあったのかもしれませんが、その時はまだ逃走先の当てがありません。あまりにも無謀すぎます。

 

 では本気で逃げていなかったのか?自分の衣服などを詰め込んだ荷物が入ったスーツケースを引いているところは良いのですが、浴衣姿なのが引っかかります。浴衣は祭りの服装ですが、これで「本気で逃げている」と思われることはまずないでしょう。ですがこうなると、典道に助けを求めたシーンと矛盾してきます。 

 

 なずなは典道に、「典道が水泳勝負で勝つはずだった」と予測していました。彼女もまた、後の典道同様水晶玉を投げて典道が勝つ未来に収束することを望んだのでしょうか。はたまたそうだとしたら、祐介が勝った世界では全てうまく行かなかったのか。典道が勝つ世界にしか、彼女の願いは叶わなかったのか。私はこの記事を書くまでずっと「観客が最初に見た光景、平凡な田舎での日常生活こそが"元の世界"」と思っていましたが、この仮定を考慮してからは想像の幅が広がったような気がします。これが成り立つなら、最初に見たあの世界ですら"元の世界"ではなく、"なずなが改変(タイムリープ)してきた何番目かの世界"ということになります。冒頭のシーンで水泳水着で海の底に落ちる二人が描かれていますが、終盤の海に沈む二人のシーンによく似ています(どちらも背景に花火が映っている)。彼女が気付いていないだけで、実は二人にとって理想の世界があったのではないでしょうか。

 

 ただこの仮定においては重大な疑問が残ります。以前まで水晶玉を投げ続けていたとするなら、なぜその後も投げなかったのでしょうか?母親に捕まりスーツケースから落ちた水晶玉を典道が拾ったことで、所有権がなずなから典道に切り替わったということでしょうか。その後は水晶玉を投げるのは決まって典道です。なずながいるシーンでも、「なずな、投げるぞ」とだけ許可を貰い投げています。なずなの所持品なのに他人に託すものなのかな、とこの点はずっと謎に包まれています。

 

 典道が一回水晶玉を投げた後の教室のシーンにて、なずなが彼に思わせぶりな表情を向けていましたが、あれは色々な意味に捉えることができるかもしれません。「典道が私の思う通りに動いてくれた」、「典道を恋人として見ている」、「典道の今後の行動に期待したい」など。何かしらの願望があったことは間違いなさそうです。

 

 なずなが物語中盤から口にしている「駆け落ち」とはどういうことでしょうか。

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 定義は上記の通りですが、この意味ではないと私は考えました。「駆け落ち」に対して「心中」と表現を間違えた典道ですが、あながち間違いではないと思います。典道のこの時の願いは、「とりあえず彼女を救ってやりたい」。しかしこの時点でのなずなの願いは分かりません。「典道と一緒に逃げたい」というより、「典道が必要」なニュアンスのように取れます。要は親から逃げる云々より、典道という存在を確保することが彼女にとって重要だったのではないでしょうか。それが恋人という形であっても、心中というバッドエンドで終わる関係であっても。

 

 典道が灯台の頂上で水晶玉を投げる直前、走ってきた祐介に突き飛ばされますがあの行動は少し疑問に感じました。水晶玉の能力が改変にせよタイムリープにせよ、典道が「もし〜〜〜なら」と願う以前の世界がどれを引きずっているのかが分かりません。なずなに最初の世界の出来事を伝えても「知らない」の一点張りだったことから、恐らく水晶玉を投げる人以外の人間が保持できる記憶は、その世界と直前の世界が限界かと思われます。もしそうなら、祐介が激昂して突き落とす前の世界は「自転車になずなを乗せて祐介を置いていく」という世界なのでしっくり来ます。私は一応これで勝手に納得しています。

 

 花火は希望の象徴、だそうです。そんな花火が見たこともない上がり方をしているというのは不幸を表しているのではないでしょうか。典道がそれを察したのかは分かりませんが、「こんな世界、あってはいけない」と、おかしな世界を全てやり直しています。そんなおかしな世界が直ったのが、花火師が水晶玉を打ち上げた世界というわけなのですが、これがまたどんな世界か分からない。花火師は酔っ払っていたので何かを望んでいたわけでもなく、また典道が何かを望んだわけでもない。ある意味何の干渉も受けていない、純粋な世界になったということでしょうか。玉虫色な回答になってしまいますが、「もしも」が詰まった氷が二人の目の前で砕け散った描写は、もう他の可能性は完全に消えてしまったことを意味するのかもしれません。

 

 結局、最後はどうなったのでしょうか。ヒントは教師が典道を呼ぶ声、祐介の表情ぐらいしかないと思います。

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(近日編集予定)

 

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 "なずな"の花言葉なのですが、「あなたに全てを捧げます」らしいです。ナズナ畑がかなり描かれているので意味があると思いますが、果たして誰に捧げているのでしょうか。というのは愚問ですね、ではなぜ捧げるのでしょうか。典道に全てを任せられる、と思ったのは最初の世界で典道を必要としていた点から分かりますが、どうも捧げる点だけがうまく解釈できません。

 

 結果としては主人公である典道、ヒロインのなずなが救われていません。ラブコメを個々の解釈に委ねてしまうと意見も無数に出てきますが、二人が愛し合うのは改変(タイムリープ)後の世界での出来事です。しかもその世界が全て存在してはいけないものだとしたら、彼らは恋仲であるべきではなかったことになります。これでは報われない。そういう想いも込めて、典道は水晶玉を投げ続けたのではないでしょうか。

 

 花火を下から見るのは花火師の方々くらいですかね。典道となずなは花火師だった…? 

 

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 深く掘り下げた考察は以上となります。同じ映画で2記事書くこと、多分これからもないのでは?普段は何も考えずに映画を楽しむ派なので、慣れないことをすると頭が疲れますね。楽しいことですが、皆さんも考察は程々に。

 

 じゃあな。